北郷の母

ゆめも寒むかろ さいはての
母の墓標に 霧がふる
かもめでさえも 行けるのに
なぜに行けない あの島へ あー
いまは異国のふるさと 千島

おかあさん…
聞こえますか 私の声が
島を追われたあの日から
人さまの情の袖にすがりつつ
女ひとり生きて来ました
………おかあさん あゝ また
霧笛が声を消すんです
せめて故郷(ふるさと)が せめて故郷があったなら……

母の位牌を 背なにしょい
親のない子は 泣けもせず
知らない人に 手を引かれ
島をのがれた 想いでも あー
いまは異国のふるさと 千島

はぐれ千鳥よ 啼くじゃない
泣いてみたとて かえれない
涙にかすむ 島染めて
あかい夕陽が また沈む あー
いまは異国のふるさと 千島
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