水紅葉と願い

川沿いの紅葉の葉は
もう随分と落ちた
木が色を落とす程に
水は紅く染まった

指の先が冷えてきた
秋も、もう直ぐ終わる
伸ばしかけた手の先が
君の影を掬った

此処を歩けば君は嫌でも映るけど
僕が君と、君が僕と居たということさえ
君が居た跡に触れていないと
失くなる気がしてた

何一つ僕は知らないまま、分からないまま
君はまだ此処に居ないまま
まだだ、まだ
今を染め尽くして
過去さえも鮮やかに染めて
君が今と間違う程に

歩き続ければ桜が見えてくる
花も葉も疾うに落ちた
鳥居が奥に見える

あぁ、そうだ
いつも君は僕よりも長く何を願っていたのか
君にまたいつか会えたのなら訊いてみよう
その時は僕も伝えるから
「二つ目は、もう今、叶ったから
一つ目の続きを始めよう」
また同じ夢を見て仕舞う

散り際にこそ美しく成るのは
人の心も同じなのだろうか
それなら要らない 美しい心など
君を想う醜い僕で良い

君を今も忘れられないこと
散る葉にさえ、水にさえ君が居ること
「ただいま」と今も言って仕舞うこと
その全てを伝えたいことを、
何一つ君は知らないまま、分からないまま
君はまだ此処に居ないまま
まだだ、まだ
今を染め尽くして
神さえも見なかった程に

君が、今と間違う程に

また、見たいと願う程に
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