赤い線

ズボンのポケットの中
失くさないよう握る冷えた手の平を

もしも失くしてしまえば
僕の左手はただ狭い虚空を掴む

ここに赤い線を引っ張って
付箋も貼ってみたんだ
二人の始まりに

ずっと忘れないで 忘れないで
もし忘れてしまう日が来たなら
思い出せるようズボンのポケットに
連れて行くから強く抱き締め合おう

部屋の隅っこにまた
増えていく写真はどれも笑い合っている

嘘か本当か言葉じゃ分からないけど
中の二人は「本当」で僕らを包む

いつまでも いつまでも
溶けない熱を帯びた氷のように
透明を映していよう

赤い線を延ばす為に
筆を走らせる
二人の幸せそうな終わりまで

ずっと忘れないで 忘れないで
もし忘れてしまう日が来たなら
思い出せるよう部屋の隅っこに
連れて行くから同じように笑おうよ

手紙の束読み返したら
丸文字は変わらないまま
ずっとずっと変わらないで

壊してくれた僕の殻
大切に右のポケットの中
思い出せるように始まりを

ずっと忘れないで 忘れないで
もし忘れてしまう日が来たなら
思い出せるようズボンのポケットに
連れて行くから

繋がれた二つの赤い線は
時が経てば薄れるけど
その度に二人で力込めて

なぞれば消えないよ
太く強く書いて行こう
二人の時間を忘れないように
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