あの子が描いた非現実の王国

今までも これからも
ずっとずっと知られないままの
沈みそうな夜にあの子が描いた非現実の王国

あの子は友達と花を千切って
日記と一緒に火をつけた
そして画期的な光を空に放って
この宇宙から逃げ出す準備したようだ

けれども情熱が世界をひっくり返すのは
ほんの数秒の小さな出来事で
意味を持ちすぎた過去と
ひどくくたびれた未来が
容赦なくそれを否定しにやってくるだろう

沈みそうな夜にあの子が描いた非現実の王国
不完全な暗闇であの子は泣いた
なにひとつわからなくて泣いた

誰もが身体に囚われ 言葉に囚われ
その内部から手を伸ばし合う
ここはちょっと寂しすぎるからね
悲しすぎるからね
今にもどうにかなっちまう気がするからね

ある人はペンを走らせ
ある人は音を鳴らして
ある人は虚構を映したりして
ある人がそれを売って
ある人がそれを買って
気付いたらそんな風になっていくのねえ

僕は僕の監視下の中で
毎日ふらふらと芝居染みた動きをやるだけで
ひとりぼっちの部屋に戻れば
途端にああ、疲れたと
死んだように眠りこけるのだ

あの子が飛ばした重たいブルーの影は
きっとその瞬間にも僕を掠めていって
さよならすら響かせず
さよならすら響かせず
ただあの子の目を少しだけ乾かしたような?

もう会えないんだね
お目にかかれないんだね
時間の檻の中で燃える君の
延びてくる手をキャッチできるのは
永遠にただひとりだけなんだから
目を逸らさないでよ
驚かないでよ
なかったことになんてしないでよね

今までも これからも
ずっとずっと知られないままの
沈みそうな夜にあの子が描いた非現実の王国
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