回送

始発で海まで出かけよう
今日はこのまま夜とすれ違って
自販機の明かりを借りて
これからのことを話そう

かばんはひとつで足りるから
空いた片手で僕の手を持って
悲しさに気づかれる前に
できるだけ遠くへ行こう

太陽の眩しさだけ
行き止まったときのため連れていこう
大丈夫 うまくやれるさ
僕らはどこにもいないんだから

始発で海まで出かけよう
聞いたこともないなんとか線に乗って
心さえ邪魔になるほど
綺麗なものを見に行こう

夜が明ける 歩道橋の上
街灯の灯りが消えていく
履き違えた理想やなにかを
履き潰すために歩いた日々
僕らが見ている世界はきっと
大きな物語の1ページで
次の句点にたどり着いたら
ながい眠りが降ってくるんだ
帰ろうって伸ばしたその手が
僕にはひどく眩しかったこと
カッターの刃が折れる音
アスファルトに溶ける君を見る
くたびれたその手を持って
背中越しの体温を連れて
大丈夫 うまくやれるさ
君がどこにでもいるんだから

始発で海まで出かけよう
かばんに詰めた思い出を背負って
さよならが冷めないうちに
できるだけ遠くへ行こう
君のすぐ近くへいこう
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