あの夏の君を思い出して、僕は走りたくなった。

あの夏の君を思い出して 僕は走りたくなった

潮風に打たれ走り笑う
2人のシルエットが浮かんでくる
灼熱の匂いが鼻を掠るたび
胸が焦がれて苦しくなる

かけすぎたシロップも
いつも合わなかったピントも
手をつけずに終わったページも
全てが甘く蘇る

2度と戻らない時間を
今でも羨んでしまう
自分が情けなく疼いてしかたないんだ

あの夏の君を思い出して
僕は無性に走りたくなった
今、ふわり揺れる純白が
見えたような気がした

永遠に続けばいいと思っていた
続いていくものだと思っていた
同じサンダルで次の夏も
この場所に並んでいる気がしてた

夜を飾った極彩色も
手に届きそうな星屑も
華奢な指から伝わる熱も
全てが鮮明に残っている

次の角を曲がったら告白しよう
あの日の帰り道
どうして僕は躊躇ってしまったのだろう

当てなんてどこにもないのに
君の残像をまだなぞっている
息が上がって苦しいけれど
それでも足は止まらなかった

誰かを想う愛しさも
人を信じる苦しさも
失って気づく愚かさも
全部教えてくれたね
君が側にいたのなら
この世の全ての痛みも
僕が背負えたのに

何も言わずにどこへ行ってしまったの?
どうせなら記憶ごと消えてくれよ
もうどれだけ時間が経ったと思ってるんだ?
僕だけ残して

あの夏の君を思い出して
僕は無性に走りたくなった
居ても立っても居られずに
その名前を叫び走り出してしまった
遠に散ってしまった花を探して
笑えてくるなバカみたいだな
今、ふわり揺れる純白が
見えたような気がした

もう少し、後少しだけ
走っていよう…
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