2分間のバラッド

たしかに寒い街だったよ
みぞれがしょぼつくような夜のこと
思い出すだけでも鳥肌立つぐらい
ゾッとするよなお話しさ
街の名前は覚えちゃいない
そしてこんなことになろうとは

あの頃俺もいっぱしの唄い屋で
ほんとまんざらでもなかったんだ
とはいっても誰かの前座ばかし
地方巡業というやつでこの街へ
その夜コンサートは大成功
大入袋もらってホクホクだったよ

打上げパーティーじゃ喰い放題
ここまでは本当にいい夜だった
ホロ酔い気嫌でギターをかかえ
宿屋へ帰る途中のことさ
電信柱の影にかくれた女の子
俺をそっと呼び止めた

あんたの唄にはシビレタワ
握手をしてと寄り添ってきた
年は18ぐらい番茶も出花
薄化粧がほんのり匂ってた
あの娘の手のひら冷たくて
ジーンと胸が熱くなり

俺にも運が開けたような
スターになる日も近いと思えたよ
握手をしたあとほほえんで
サインもやろうと紙きれ出した
その時あの娘が悲鳴をあげた
助けて助けてと飛びあがる

あの娘はオイオイ泣き叫ぶ
ネズミがチューチュー逃げてゆく
そうかネズミがこわいのかと
小さな肩を抱いてやった時
街の住民勢揃い
俺のまわりを取り囲み
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