大楠公の歌

月影闇き笠置山
行在(かりや)の庭の露しげく
帝(みかど)の御衣(ぎょい)にかかる時
猛(たけ)くも立ちぬ 大楠公

金剛山の朝霧に
群(むらが)り来る賊軍を
駈け悩ませし菊水の
旗風かおる 千早城

正成一人あるかぎり
叡慮(えいりょ)を安め給えよと
聞くだに雄々し一言に
あゝ天日は 輝きぬ

また降りかかる五月雨に
覚悟の鎧ぬらしつつ
わが子を諭す桜井の
別離に啼くや 時鳥

鬼神にまさる勇あるも
時いたらぬをいかにせん
刀折れ矢弾つきはてて
恨みは深し 湊川

七度人と生れ来て
世の醜草(しこぐさ)を滅さん
盡忠義烈 萬代(よろずよ)に
祖国を護る 大楠公
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