その日-August6

苦しみという名で
呼ぶことすらできぬ苦しみが
あなたの皮膚から内臓へ
内臓からこころへ
こころから私が決して
行き着くことのできぬ深みへと
歴史を貫いていまも疼きつづける

その日私はそこにいなかった

今日 子どもたちの
傷ひとつない皮膚が
その日と同じ太陽に輝き
焼けただれた土を養分に
木々の緑が夏を歌う
記憶は無数の文字の上で
鮮度を失いかけている

その日私はそこにいなかった

私はただ信じるしかない
怒りと痛みと悲しみの土壌にも
喜びは芽生えると
死によってさえ癒されぬ傷も
いのちを滅ぼすことはないと
その日はいつまでも
今日でありつづけると
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