ダム底の春 feat.Sobs

お気に入りの場所を誰にも教えないまま何度目の春
今日も水位はひどく低い無人のダム 干からびたダム

適宜適切な距離誰とも測れないまま快適な日々
こんなとこに一緒に来たい人も思い浮かべられない

昨日は確かどしゃ降りの雨だった
溢れ返るくらいを期待して来たってのに拍子抜けさ

そこらじゅうに花が咲いてて足の踏み場もないくらい春
こんなことになるなら買わなくたってよかったな

助手席に寝かせた花束 ぶら下げて向かう先はダム
グリーンブルーの湖は見た目より深そうだ

どの花が喜ばれそうかなんて浮かれた店先で
やめとけばよかった、とは言えなくて

渡せなかった花は即ち存在もしない愛にも等しいから
投げ捨てたって罪にならない いくつも浮かぶ言い訳も束ねて
振りかぶって水面に放つ 真っ赤なリボンがほどけ沈んでゆき
あとにはもう波すら立たない いつか水底で咲くだろうか

ダム底に投げた花束 青空にその一瞬は焼きついて
花の名も覚えられない僕の目にただ残って消えない
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