だれですか

それは 一枚のハガキで始まったの
差し出し人の名前がない
「今日も電車で お見かけしました」と
たった一行 ささやくように……
一週間に 欠かさず一枚
一行ずつの 語りかけ
だれですか あなたはだれですか
「勝手に心を寄せているのです」とか
「日ごとに想いがつのります」とか
はずむような 歌うようなその言葉に
いつしか 心が傾いて行くわ
あなたは私を あなたは私を
どこから見てるの どこから見てるの

それは 水色のハガキで終わりました
雨の激しい たそがれどき
「ぼくはやっぱり 遠くへ行きます」と
上手な文字が むせんでいたわ……
それからぷっつり ハガキがとだえて
気がかりだけが 残ったの
だれですか あなたはだれですか
「背の高い人と歩いてましたね」とか
「もう書くことがありません」とか
そんなハガキ届けられて 気になってた
矢先の出来事 それは誤解です
どうすればいいの どうすればいいの
あなたに逢いたい あなたに逢いたい
×