エリザベス

開いたアルバムの中に
やっぱり殆ど写ってなかった
シャッター係 譲らない父は外じゃサラリーマン
家ではカメラマン
あたしが生まれた時買ったらしい
フィルム一眼 一番の自慢
最初はピント ズレズレで残念
フラッシュ焚いて真っ白な顔面
「一体何枚とれば気が済むの?」
年頃の娘に呆れられても
「ラスト!もう一枚だけ!」
なんて粘っては片目を閉じて笑ってた
フレーム収まる私と母
その手前カメラ構える父親
写真に残る笑顔は二つ
でもその場に三つ 笑顔があった

「ハイチーズ」って言われて何故だか
「愛してる」って言われた気がした
「ハイチーズ」って言ったはずなのに
「愛してる」って言えた気がした

レンズの丸みは地球の丸み
お揃いのカメラ 恋人と二人
世界あちこち散らばる光を集めに出かけよう
西へ東へ
砂漠の空に浮かぶ白い月
金色の大地に星が土砂降り
シャッターチャンスを逃した五秒後
凹んでるあなたの顔を収めた
「なんで今撮るの?」って
膨れてるあなたの濡れた美しい瞳
心がうねり揺れる度パシャリ
一枚一枚が記憶の栞
いつか年老いた時も一緒に
肩を寄せ合ってアルバムを眺める
そんな未来をレンズを通してみていた
願いを込めてシャッターを切った

「ハイチーズ」って言われて何故だか
「愛してる」って言われた気がした
「ハイチーズ」って言ったはずなのに
「愛してる」って言えた気がした

思い知らしてあげるよ
あなたが一体どんな人間なのか
だからいつでも首から下げ肌身離さず
どこへでも連れて行ってね
わたしの頭の斜め上で鳴る
高鳴る鼓動が出番の合図
この身をあなたの両手へと預ける
眼を覗く その時に繋がる
何に奮えて 何を感じ 何を愛し
何処に向かい 何故に刻むのか
その問い掛けを共に追いかけよう
日々日常 冒険にしよう
手垢や汚れ擦り傷だらけのわたしの全身を貫いた全て
同じ光や構図は二度とない
同じ涙はもう流れない

「ハイチーズ」って言われて何故だか
「愛してる」って言われた気がした
「ハイチーズ」って言ったはずなのに
「愛してる」って言えた気がした
×