鏡の国から

「もし 好きなひとができても
私のこと忘れないでね」って
街を越すあなたに言った……
心は届いていたかしら

鏡の国は 反射映し
手のひらも ひとつに重なる
泣き顔もかくされて 笑顔になるよね……

ぜんまい仕掛けのオレンジが
時を刻めば わたしにも
うすれる記憶をひきとめる幼さが
消えてゆくかしら
いつか……

ギンガム・チェックの洋服
休みの日に着て あなたの街まで
バスに乗りでかけたけれど……
手にしたキップは 片道よ……

鏡の国とむかいあえば
くちづけも ひとつに重なる
あたたかいひとしずく 涙も伝わる……

隣りの仔犬の泣き声で
赤い郵便自転車が
のぞいた窓から 一通の手紙だけ
持って来てくれる
かしら……

ぜんまい仕掛けのオレンジが
時を刻めば わたしにも
あなたを訪ねて会いに行く勇気が
わいて来るでしょう
いつか……
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