金木犀の花の名を

呪って咲くでしょう

きっと 縋り付こうが どうにもならんし もう戻らないね
まだ 諦めたくないなんて 言えない 癒えない
日に日に冷えていくその横顔が
秋風みたいだ どうしようもないね

あの日 街路樹の道歩いて あなたが聞いた「この甘い花は何?」
せめてあたしが消えても その答えは
あなたと添い遂げるように

オレンジの花の名を 甘い記憶ごと
ずっとずっと呪うように あなたに遺したの
教えた花の名は 来年も再来年も
あなたの記憶に咲くでしょう

きっと 次の秋には あたしじゃなくて他の誰かが
笑ってあなたの隣を歩くんでしょ
だって交わらないよ 伸びた影も
思い出一つじゃ 満たし足らないよ

ああ ポロポロと地面に落ちた 花屑は もう永くないからさ
せめて託してく 花の名前を
タトゥーのように脳に刻んで

紫陽花と向日葵と桜以外にも
もっともっと花の名を 覚えてほしいのです
教えた花の名も 香りもあたしも
あなたの季節に生きてくの

永遠に巡る四季にのって
思い出して 生きる限り
願いより爽やかな呪いで
その未来に 香って 香って 誘って

オレンジの花の名は 甘い記憶ごと
ずっとずっと呪うように 秋を彩るでしょう
金木犀の花の名は 来年も二十年後も
あなたの記憶に咲くでしょう
あたしと咲くでしょう
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