ミンナゲンキカ。

「みんな元気でやってるか 僕は元気でやってる
いつも立派な野菜ありがとう すごく助かってる
自炊もだいぶ慣れたよ 煮物なんかやってみたよ
案外美味いもんだよ 母さんのようにはいかないけどね」

白い便せん 面影揺れる

「仕事もまあまあ順調で 大変だけど充実
友達なんかもできてさ 毎日わりと忙しくて
なかなか帰れないけど そのうち顔を見せるから
戸締りきちんとするんだよ みんなによろしくね」

白い便せん まぶしく光る

渾身の力を込めて テーブルにペンを置いて
上手にかけた文字の 羅列を眺めて
さあ行こう ポストに行こう 今すぐここから立ち上がろう でも
いつまでたっても動けなくて 夜になって朝になった

白い便せん ごみ箱に捨てる

もうずっと外に出るのが怖くて 誰にも会いたくなくなって
閉じたまま汚れたカーテン ベッドの中で丸まって
仕事なんてとっくにやめた 冷蔵庫は空っぽです
開けられない段ボールの中 しなびてゆく野菜の匂い

こんな自分が大嫌いで でもこんな自分しかいなくて
僕は何が好きだった? もう何にも思い出せなくて
このままじゃダメだって もうとっくにダメになってて
やっとの思いで取り出した 白い便せん見つめてる

ミンナゲンキカ
白い便せん
ミンナゲンキカ。
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