オートバイ

信号が変われば街はホログラムの夢
黒く濡れた髪がシャボンを燻らす春
古いオートバイの後ろでまたたく瞼
轟くリズムに呼吸を忘れた

立ちどまる昨日の影を越えて

擦り抜ける闇のなかで
身に纏った鎧が夜にちる
擦り切れる音のなかで
耳打ちして光の束になる
“私を壊して”

国道を曲がればホームタウンへの出口
緩いガードレール辿って見慣れた屋根
微睡みに落ちた街を起こさないように
薄明かりが差した背中に手を振った

歩きだした今日を巻き戻して

草萌青羽の騒めきは衣衣の胸に咲き乱れ
麗らかに微笑むあなたと一緒なら
風にでもなれるさ

擦り抜ける闇のなかで
身に纏った鎧が夜にちる
擦り切れる音のなかで
耳打ちして光の束になる

透きとおる身体はいま命の旅さらさら吹かれている
彼方には月灯りに浮かびあがる密やかなオートバイ
“私を壊して”

信号が変われば街はホログラムの夢
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