一膳の箸

やっと叶った ふたりの夢は
紺ののれんの 小料理屋
“でくのぼう”だと 怒鳴られながら
腕に仕込んだ 百の味
棒は棒でも おまえとならば
おんなじ長さで まっすぐで
今日からふたりで 一膳の 一膳の箸

奥に小上がり テーブルひとつ
六人座れる カウンター
ネタの仕込みは 港の仲間
いつもいいもの 届きます
今は苦労が 楽しみでして
箸にも棒にも なれないが
女房のおかげで 一膳の 一膳の箸

杉の小枝で こさえた箸は
山の香りが 売りですが
地元生まれが ふたりの売りで
どうか御贔屓 今日からは
お前女将で 俺、板さんで
寄り添い働く 夢あかり
ふたりの手本は 一膳の 一膳の箸
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