からっぽの月

小指から広がってく
あの日の記憶 鮮やかなままで
月のない夜 ため息ひとつ
どこまでも影に染められた世界

「逃げ出したい」「諦めたい」
そんな言葉よぎる
振り払っても 消えない 消せない
抜け出せない深い渦に飲まれてく

暗い部屋で ボクはどうして
ひとりきり動けないままでずっといるのだろう
あぁ このままじゃだめなのに
夜の底でかじかむ両手
伸ばしても何も掴めず まっすぐ落ちてゆく

今夜の月はからっぽで 今の僕もからっぽで
同じ空の下 遠くの君は
あの約束なんて もう忘れてしまっただろうか
届かない言葉浮かんで
音もなく夜に溶けてく

「逃げ出さない」「諦めない」
そう言えたのなら
どうしようもない苦しい気持ち
見ることなく知ることなくいられたの?

分かってるって ボクのせいなんだって
いつまでも子供のままじゃいられないから
あぁ この足で進まなきゃ
重たい心臓で 刻み続けて
過ぎてゆく日々は平等に灰になっていくだけ

月はまた満ちてゆく
見えなくてもいつでもそこにあって
ここからボクも少しずつ
満ちてゆけると信じたい

立ち止まって終わる夜だって
ボクにとって意味があるんだと思ってもいいかな
あぁ 今だけは 今だけは

おねがい

ねぇ、聞かせて キミの言葉で
いつの日かまた会えるまでやめられないから
そう ボクたちはあの場所で
夜の底で見定めた焦点
燃える火を抱いて
東の空が明けてゆく

きっと そう遠くない未来で
キミとボクは また会える
根拠はないけど そんな気がするんだ
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