川端の宿

川端の
宿にしとしと 雨が降る
ひそかな胸の火 消すように
会えばはなやぐ 妻となり
別れりゃ飛べない 鳥になる
叶わぬ恋と 知りながら
追いかけて ひとり泣く 朝の宿

川端の
橋のたもとに たたずんで
流れに捨てたい こころ傷
月に一度の 逢う瀬でも
顔見りゃ言えない うらみごと
芝居であれば すむはずの
かりそめの 恋に泣く 朝の宿

川端の
宿を離れて ふり返る
名残りのほてりを抱きながら
覚悟してても 愛(いと)しさに
落とした涙は 数知れず
責めるはわが身 ただひとつ
はかなさに ひとり泣く 朝の宿
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