多摩の四季

名残り雪
消えないままに 梅は咲く
平将門(たいらのまさかど) 手植(てう)えの梅は
青梅(おうめ)の里の 名を今に
あゝ金剛寺(こんごうじ)
枝垂桜(しだれざくら)の 蕾(つぼみ)くれない

ゆく春に
多摩の川沿い 芽吹き初(そ)め
瑠璃(るり)の流れは はやし射山渓(しゃざんけい)
仰(あお)ぎ見やれば 霧はれて
あゝ御岳山(みたけさん)
連(つら)なる頂(いただき) 燃え立つみどり

谷深く
岸壁せまる 鳩の巣の
かすみの底に 瀬音(せおと)はひゞく
白百合ゆれる 数馬侠(かずまきょう)
あゝ愛宕山(あたごやま)
松風ふけば 湖波(こなみ)も碧(あお)し

わく雲の
たゆとうなかに 見え隠れ
錦(にしき)かがやく 丹波(たば)の山々
昔語りの 悲しみの
あゝ鶏冠山(けいかんざん)
花魁淵(おいらんぶち)に 散る黄金色(こがねいろ)

冴える風
多摩の奥處(おくど)の 山果てる
峠たどれば 大菩薩嶺(だいぼさつれい)
山並みの上(え)に 聳(そび)えたつ
あゝ富士の峰
霙(みぞれ)もやがて ふぶく白銀(しろがね)
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