はやぶさの逃避行

僕はJAXAのスタッフ イトカワから戻る予定の はやぶさが
大気圏再突入で 燃え尽きる運命が 可哀そうで
はやぶさが生き残れるプランBを 密かにプログラミングし

ロケットで打ち上げたはやぶさを 地球周回軌道に投入
地球の重力使い ハンマー投げの要領で スイングバイ

加速し速度稼ぎ 小惑星イトカワ 3億kmの旅
重量500kgのうち 150kgを占めるキセノンを
太陽光発電でプラズマ化し 電子剥いだ陽イオン(+)を

マイナス電極板で引き 穴から吹く反作用で ケツ押し進む
イオンエンジンスラスターで舵取り イトカワランデブー

2年半加速積み上げ ついに時速4万kmに達し
イトカワ着陸を 全人類が固唾を飲み見守るなか
突如はやぶさが方向変え 太陽の重力でスイングバイ
時速60万kmに加速 4光年離れた 恒星

ケンタウリ目指し 40兆km 7千年の旅に出た
真空の宇宙は 摩擦無く はやぶさは 必ずケンタウリに着くだろう

7千年後 はやぶさは プランBで搭載してた5kgの
面積15m2の 太陽光発電セイル開き
ケンタウリの光で 1,000日かけ発電したエネルギーで
イオンエンジンを逆噴射し 減速し 惑星とランデブー

その星は 地球と同じ大きさで 生命の素の水もあり
後にはやぶさと呼ばれる星の 写真がついに届き 写ってたのは

不規則な3つの太陽で 海が蒸発する環境下で
透けた体に 生態系内包し 歩く知的生命体
狩猟民のように 安息の地探す はやぶさの方舟は
三体問題をラグランジュ計算 昼を避け 夜を往く
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