幸せな左腕

気の早い半袖を通り抜ける5月の風
細い僕の左手は ここ最近カッコイイ
君がくれた四角いアンティークの腕時計
誕生日でもクリスマスでもないから余計嬉しい

放っておいたら針は止まってしまう
ねじを休まず巻くように君を想うよ

服の趣味も冴えない僕に
似合うかちょっぴり心配だけど
お金なんかじゃ買えない
「君」というブランドの腕時計

何十年昔のこの時計の持ち主が
君と僕を近付ける魔法でもかけたよう
自販機のジュースが全部冷たいのに変わった
そんなふうに君の心を変えられはしないけど

君の心の針がいつか止まっても
それでも僕は休まずにねじを巻くだろう

人を愛す本当の意味を君に出会えて教えられたよ
まだ馴染まない腕時計 耳に当て瞳閉じてみる
音も変えず ずれもせずに
チクタク、チクタク、幸せを刻む
初夏の陽射しが焦がしては左腕に残す時計の跡

もうすぐ君の大好きな 紫陽花の咲く季節だね
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