昨夜の男

昨夜私を抱いた男は
肌の冷たい男だった
見かけたところヤクザのような
仕草に苦味のある男
昨夜私を抱いた男は
街で拾った男だった
子供のような瞳の色が
私を悲しくさせたから
やり直しがきくものならば
私だってこんなに投げやりになったりしない
好きにして この躰(からだ)
打(ぶ)とうと噛もうと
乳房で涙を拭おうと

昨夜私を抱いた男は
二度と逢えない男なのさ
ベッドの横の小さな紙に
別離(わかれ)の言葉の走り書き
その字を見て あまりに美しい
その字を見て 私は初めて涙を流した
やり直しがきくものならば
もう一度 逢いたい…
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