失われし最終楽章 (feat. リゼ・ヘルエスタ)

古いアルバムのページをめくるように
深い森の奥地へと

未だ鮮やかな記憶を辿るように
禁じられた場所へと

生まれつき人より多くの 音が聴こえる
《体質》を持った私を

街の《騒音》から遠ざけて 教えてくれた
音楽を作る 楽しさを

雨上がり虹が架かるような日々は
《師匠》と一緒に過ごした思い出
だけど幸せは 呆気ない程に
空曇り嘲る

さよなら言わないで 消えた貴女を
探す当てもなく 儘戸惑う窓辺
教えてもらうはずだったこと 沢山
まだあったはずなのに

記憶の片隅 心残り無くすために
今鎖された部屋の奥へ……

埃塗れの 長い階段を抜け
薄暗い壁 手探りで進んだ

どうして私を置いて行ったの? それだけがどうしても知りたくて
隠された鉄の《扉》 重苦しい音が響いた

古い紙とインクの黴びた匂い
何か読めない表記で 繰り返し書き足されて
その《楽譜》を目にした 時間が動き出すように
流れる《重旋律》 全てを識らせた

旋律が導くように
不思議と歩む道 迷う事無く
狂った歯車はもう
運命すら調律して従えた

アトリエに近づく毎に
確かに鳴り響く 怨恨の声
旋律に侵された者の
感情が直に流れ込んできて

鈍く痛む頭が
もう来ない未来を《幻想》に見せて

手招いた 歪で甘く穢れ無き音は
不快な程に心地良く響いていても
描いた物語は 最悪の終わりに満ちていて

その中で一つ まだ抗う《男》の声が
どうしてか懐かしくて 《師匠》の声に似ていたから
手を伸ばし開く目
助けようと そう 決めたんだ

さよなら言わないよ 貴女がくれた
ものが私まだ 忘れられないから
伝えたいんだ 音を失くした街にも
生み出せる《希望》がある!

拙くて良い 奏で続けよう
人がこの街で生き続ける限り
絶望よりも 強い光で包んで
《大好きな師匠》に届くまで!
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