落日

夕映(ゆふば)へは 大廣閒に長(なぐわ)き影(くわげ)落とす
日夜明け暮れた舞踏會(ぶたうくわい)
貴婦人の微笑み シヤンパンの雨
時は經ち 全ては繪空事(えそらごと)
床には砕けたワイングラスが
凍てつく心を寫(うつ)してゐる
瞳は空しく 虚空(こくふ)を彷徨(さまや)ふ
カアテンは今 静かに下ろされた
思へば何と不思議な日々
少年(しやふねん)の甘き戯れ 將校(しやふかう)の冷たひ視線
私には何が残ったのか
鏡に映つた後悔(かうくわい)と輕蔑
明日からは 雑踏(ざつたう)に身を沈めて
背後には 沈みゆく豊かな太陽(たいやう)
カアテンは今 静かに下ろされた
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