蝉しぐれ

しぐれよ 蝉しぐれ 遠い夏
耳を押さえても指の隙間から
忍びこむ悲しい歌よ
枯れて落ちなければ
花ではない恋ではないと
そんなふうに聞こえる日が
不意に来ました

しぐれよ 蝉しぐれ 長い道
人のいのちを季節にたとえれば
ひとめぐりしたのでしょうか
今は息の音が
聞こえるほど静かだけれど
胸の奥の蝉しぐれは
鳴きやみません
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