おやすみ

蚊取り線香の煙が見る見るうちに
空を満たしては消えて
香りだけが残ってる

鈴虫の鳴き声が夜風に乗り
囁くおやすみの合図
時間が焼けて白く落ちていった

真夏の空気と首を振る扇風機に
咥えたスイカのアイスを
溶かされぬように

必死な顔を見て笑いあったのも
随分昔の話に思えてきた

八月の蛍のように
消えそうな光のように

君と生きていく 当たり前が
今 奪われて 永遠に

擦れ違う愛に苛立ち怒鳴り合った事
これでも愛していた事
伝えられてたら

転がる蝉を避けながら歩いては
誰にも見つからぬ様に
声を殺して泣いてるよ

毎日が雨でいい
降っては乾いてまた泣いて
無かった事になるみたいで怖い

暖かい太陽に身を委ね
うとうとしてそのまま横になる
待ち合わせは夢の中

君に会いに行く
帰り道なんかもう分からないでいい

君と生きていく 当たり前が
今 奪われて 永遠に おやすみ。
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