晩冬と春嵐

冬が終わりたくないと
名残惜しそうな風には慣れて
忙しない笑い声のせいで
今年は少し前倒しで暖かいな

二丁目は橙の世界で
逆光を背負った
芳しい君と夜を待とう

それはあまりに眩しくて
通り雨のような君に濡れて
月明かりの下で踊る妖精は
微笑んで消えゆく 魔法は解けるよ

一瞬で過ぎ去った涙
離せない、容赦ない気まぐれに揺れる
酔い醒ましが無意味なほど
君の微かで確かな熱に触れる

火照った頬が誘うように
絡みついている
もう少しだけ夜を探そう

それはあまりに眩しくて
通り雨のような君に濡れて
月明かりの下で踊る妖精は
微笑んで消えゆく

今だけは手を繋ごうよ
夜が明ければ醒めるとしても
忘れないでねって声が漏れた気がして
振り向けば幻

春嵐がさざめけば君を思い出す
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