僕が暮らした街

横を通り過ぎる
郵便配達のバイク
ふわりと甘く漂う
駅前のパンの香り

日向ぼっこした猫と
バットを背負った少年
ただいま そうこれが
僕が暮らした街

響く五時のチャイム
まだ遊んでたいと嘆く
仕方なく家に帰る
大丈夫 また明日会える

右手にお土産袋
左手に苦労話
何も考えず友と
走り回った道

季節が過ぎてもこの街は
あの日と同じ匂いがした
もう行くね じゃあまたね
すぐ帰って来るからね
それまでまだ変わらないでいてね

なぜだろう
この街の風が特別あったかいのは
きっと気のせいなんかじゃないよね
待っててくれてたんだよね

ゆっくりと呼吸するように
木々が優しく揺れる
次来る日までに ちょっとくらいは
立派な大人になっていられるように

ありふれているけどこの街は
僕にとってたった一つのふるさと
転んで 擦りむいて
泣きわめいた日だって
何も言わず
ただ優しく包み込んでくれた

なぜだろう
この街の風が特別あったかいのは
きっと気のせいなんかじゃないよね
待っててくれてたんだよね

ずっしりと背負っていた荷物を
一つひとつ置いていくように
ありがとう
僕はやっぱりこの街で
生きてこられて本当によかった
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