ユーモア

乾いた空に雨雲が押し寄せるように
涙があふれそうになる夜
きみのおどけた声がききたい

ぬるい陽だまりをひとりで歩いて
飼い慣らせないままのさびしさがある
強い風の日の急ぎ足の雲に
追いつくようにきみは走り去った

波の音が永遠に響く海
歌うように跳ねる砂が足を舐める

乾いた空に雨雲が押し寄せるように
涙があふれそうになる夜
きみのおどけた声がききたい
やさしいユーモアをもっと教えて

くだらないジョークをいくつもまじえて
悲しい話をうまいことごまかす
散らかる心の部屋を片付けて
余白を生むようにきみの詩は在った

僕たちは永遠でいられない
それでも言葉の残響は名残る

束ねた花に煩いがほどけていくように
きみから見た世界は柔らかい
ゆるむ頬で真似してうたう

抱きしめあえない星座たち
夜の隔たりの距離を詩は渡っていく

乾いた空に雨雲が押し寄せるように
涙があふれそうになる夜
冷蔵庫の音がうるさい
きみのおどけた声はもうきけない
きみのユーモアを覚えておこう
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