権八小紫

故郷(くに)を離れて 剣(つるぎ)をたより
白井権八 流れ旅
廓(さと)の灯りに つい誘われて
いつか馴染みの 小紫
積もる苦労を かばって抱けば
前髪濡(ぬ)らして 涙雨

切るに切れない 縁(えにし)の糸は
江戸を目指した あの日から
その名知られた 長浜衛殿と
めぐり会うのも またさだめ
鈴々森から 隅田の水に
男を磨(みが)いて 深い仲

女ごころの 誠の花は
色も紫 杜若(かきつばた)
浮世波間(うきよなみま)を 生き抜きながら
白井権八 散りゆく果ても
小粋に残すは 比翼塚(ひよくづか)
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