長崎の兄妹

夕焼空の 朱(あけ)のいろ
仰げば遠く 想い出す
あゝ長崎の 原子雲
幾年月は 過ぎ去れど
母の遺品(かたみ)の ロザリオ悲し

後には病める 父ひとり
看護(みとり)に疲れ うたた寝の
あゝ長崎の 兄妹(あにいもうと)
その父さえも 天国へ
神に召されて 還(か)えらぬものを

焼野にひらく 名無草
摘みつつ聞きて 涙せし
あゝ長崎の 鐘の音
心の糧(かて)に 十五年
瞼はなれぬ 父母(ちちはは)やさし
×