珈琲フロート漂流記

遠く離れたあなたを想う日々は
ただ寄せては返す往復航路

恋をたたんで帰ったこの街には
夏の日の夢なんてもう起こらない

旅に棲み着く風船は
牡丹花火の音がする

あなたを想うとはち切れそうです
名残りの月の筆で綴った漂流記

ルビのふれない気持ちを焦がしたまま
ふやけて濡れた今日に汽笛は吠える

潮騒に乗り ちぎれ雲
つもる話があるみたい

季節をまたいで わたしを訪ねて
あなたもおんなじ港へ向かうなら

この世でいちばんわたしを愛して
舷窓のそとは わたしのあこがれ

闇夜に浮かぶ海は 珈琲フロート
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