残響ラプソディ

黒いポルシェが恥ずかしげも無く初心者マークを貼っていた
違和感だらけだなこの街はいつからこんなんだったろう
怪物みたいな僕を指差して笑うカップルから目を逸らす
人目のないところにいきたいや

路上喫煙のヤンキーの前を通り過ぎてゆくポリスメン
どうみてもティーンネイジャーの飲酒を前に過ぎてゆくポリスメン
怪物みたいな顔した僕には職質してくるポリスメン
今日で今月13回目だ

「平等な世界に向かって」
ニュースキャスターは言ったんだ
SDGsは今日も達成に一歩近づいてる
それなら今の僕はなんだってんだ
何も変わらなくって
眩暈がする世界の中に居るんだ

ただ突っ立ってるだけの僕を見て不穏な顔するJK
ただ突っ立ってるだけで冷や汗が止まらない電車の中で
「世界的に見りゃ日本はマシだ」と健全そうな男が言う
今日で今月13日目だ

不平等な世界に刃向かって
彼は今走り出したんだ
「SDGsよりもずっと深刻です、誰か助けて!」
だけど声は届かなかった
一瞬にして散った赤い鮮血を
ただ三眼レンズが切り取った

9月13日17時の青いSNSが荒れた。
彼はきっとこれも想像した。
“中央線沿線部にて、人身事故につき足止め。勘弁してくれ急いでんのに、
死ぬ時くらい迷惑かけんな。”
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