いぬかみっ!狂想曲~第二章 なでしこと啓太編 ある昼下がり~

ピンポーン
「ごめん下さーい。
あの、ようこさん、啓太様いらっしゃいますか?」

私はなでしこです 薫様の犬神です
どんな時でも ご主人様につかえることが喜びです
得意のおはぎを作って 今日は会いに来ました
ご無沙汰をしています お変わりはありませんか

「あっ、なでしこちゃーん 今日はどうしたの?」
「啓太様、ご無沙汰しております。今日は私ようこさんに…」
「よく来たねーさぁさぁ上がって上がって。遠慮はいらないよ。
今日は、ようこいないからさぁ、ゆっくりしてってよー。」
「あ、あの…」
「さぁ、コートなんか脱いで。ここに掛けとくねー
あ、おみやげ? 悪いなー。
えーっ!なでしこちゃんの手作りおはぎ?!
すっげー、うまそーっ。
ありがとねー。何個食べよっかなー。あ、今お茶いれるね。」
「啓太様、私が…」
「あ~っ、な、なぁーんかビミョーに散らかってるよね…。あははっ。
ごめん、ごめん。お茶飲んだら片付けるからさ、
ゆっくりしてって。ね?ね?」

いえいえ とんでもありません
掃除に洗濯 料理ももちろん すべて私の仕事です
啓太様どうか そこでごゆるりと くつろいでいてくださいね

まさに棚ボタ状態 思いがけぬラッキー
飛んで火に入る夏の虫 踊り出すこころ ララララララ
今日に限ってあいつ いないなんて超ハッピー
下心うずうず騒ぐ エッチ スケッチ ワンタッチと

「荷物重かったでしょ?肩凝ってない?
いやー、本当に残念なんだけどさ。
ようこちょうど出かけちゃってて…
きっと3、4日帰ってこないと思うんだよねー、泊ってかない?
ついでにさ、一緒にお風呂に入ったりなんかして
背中なんか流してもらえたりなんかしちゃったりして☆
日頃の疲れを、あったかーいお風呂で
一緒に洗い流したりしたいなーなんてさぁ」
「あの…」
「そうだ!ちょうどいい!!
この際、薫の犬神やめて俺の犬神になったら?
厚待遇でお迎えするよ~。
10人のうちのひとりより、ふたりのうちのひとりのほうがさー
何かといいと思うんだよねー。
愛情が行き届くっていうかさぁ…」

いえいえ とんでもありません
春夏秋冬 千年万年 お仕えしますのはひとり
どんな時だって薫様ひとり それが私の生きる道

それが宇宙の真理です

「さぁ~て、お部屋も片付いたし、夕食もお作りしたし、
肝心のようこさんもいらっしゃらないし
私この辺でおいとまさせていただきます。
薫様が待っていらっしゃいますから。」
バタン!
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