吟澪に死す

運命の 如くに 是非も 無く
吟る 此の 歌に 矩を 見よ
闘う 鳳凰は 虞を 焼き
糾う 声律は 叢話を 成す

飢う 亡国の 暗闇を 火召らす 役儀 買えど

屍は 軈て 朽ち果てる
其の 遺骨が 散り別る 丈
なれば 去りて 遺すのは
只 風に 混じる 僅かな 己が音

囀る 御託に 意味は 無し
解き放てよ 吼 我の 澪
真贋など もう 索らず
眼指と 歌が 不動の 裏

植う 先人の 形見草 ねまる 許り なれど

屍は 軈て 朽ち果てる
其の 遺骨が 散り別る 丈
なれば 去りて 遺すのは
只 風に 混じる 僅かな 己が音

寂滅の 幼名が 生命ぞ
責めて 己咲き 其れを 名付けよ

魂は 渾て 流れ行く
此の 巷説が 慰むならば
扨も 標たり得るは
只 土に 還る 微かな 骨の跡

僅かな 己が音
×