感触

ひとつだけ、ただひとつだけ見つけたものは
誠実で不器用な、それでも柔らかな声
朽ちてゆき、ただ崩れゆく、世界を照らす
暖かで、でも残酷な、去り際の笑顔

ひび割れてく翡翠の水槽を満たすもの
「永遠ではない」なんて、初めから解ってたのに…

壊れても、なお美しく、胸を刻むのは
砕けても、なお美しい、ひとひらの記憶
忘れたいのに、なお狂おしく、胸に残るのは
痛みさえ忘れさせた、微かな感触

ひとつだけ、ただひとつだけ伝えたのは
冷たさで誤魔化した、苦し紛れの嘘
愛しくて、ただ愛しくて、選んだ言葉は
すべて終わらせる偽りのセリフ

風が吹けば飛ぶような砂に残した手紙
「永遠ではない」ということさえ忘れられたのに…

もう一度、もう一度と、もう何度思ったでしょう
枯れた花束、捨てられもせず
降り止まぬ雨は、まるで万雷の拍手喝采
愚かな後悔を嘲嗤う怒涛のよう

壊れても、なお美しく、胸を刻むのは
砕けても、なお美しい、ひとひらの記憶
忘れたいのに、なお狂おしく、胸に残るのは
痛みさえ忘れさせた、微かな感触
痛みさえ忘れさせた、微かな感触
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