鼠小僧次郎吉

逢うた初めは駿河路の
花が人呼ぶ二丁町
宿の浴衣に細襟半纏
粋な筈だよ 次郎吉さんも
惚れりゃあの妓(こ)と エー 野暮ぐらし

好いた女と茅場町
表看板魚屋の
屋号和泉屋 舞台を廻しゃ
鼠小僧の次郎吉さんよ
浮世見る目が エー 只じゃない

雪はふるふる 芝口で
あれも人の子 蜆売り
お前いくつと身上ばなし
きいて涙の次郎吉さんは
土産もたして エー 一思案

伊達にゃ被らぬ豆絞り
大名屋敷が金蔵さ
上にゃ強いが下には弱い
男義賊と 次郎吉さんに
噂淋しい エー 江戸の春
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