花粉

花粉が運んだ誰かのふとした噂
たまたま私が吸い込んで
くしゃみが出た

花粉が運んだあなたの優しい言葉
いつも季節が変わったあとから
聞き取れた

溢れるほどに浴びていたのね
鼻が出て涙が出て
なぜか嬉しくなってる

花粉に似ていたあなたの旅立つ報せ
新たな街でもどうか
元気に咲いていて

高嶺の花に恋をしたのね
鼻が出て涙が出て
とても清々しくなってる

溢れ出しそうな湯船のような
肩の上に頬を乗せながら
深く息をして

花びらでは届かぬような
気の遠くなるほどの彼方へ
飛んでゆきたい

こんな思いは二度といらない
鼻が出て涙が出て
それでも懐かしくなってる

肩の隅っこに残した香り
どこまでも飛んでゆけ
きっとあなたが待ってるような
そんなつもりになってる
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