花火

幼い君は母に手を引かれ
少し離れた 僕の家へと来た
君の来た夜は いつもより遅くまで
散らかしたままの部屋で 遊べたんだ

きまぐれなヒステリー、ほつれたぬいぐるみ
無邪気に笑う笑顔の中に
いつもほっぺたに傷をつけていた
誰にも言えない君の秘密

夜も更けた頃、思ったよりずっとやわらかな君の手を握りしめて
静まりかえる街を抜けて行く 遠く、遠くへと、ふたり、歩いて行く

おはじきの宝石 平らな地球
ヘビの抜け殻 葉っぱのお皿
祭りの後、君はひとり佇んでいた
涙を浮かべて 僕を見た

夜も更けた頃、思ったよりずっとやわらかな君の手を握りしめて
静まりかえる街を抜けて行く 遠く、遠くへと、ふたり、歩いて行く

やがて時は経ち
偶然すれちがった君は
小さな手を握りしめて
幸せそうな顔で歩いていく
遠く、遠くへ、消えていく

花火はパラシュート、絵本の星座
君の手を引いて歩き続けた
おはじきの宝石 平らな地球
ひたすら二人で歩き続けた
星空の下 線路の上を
ひたすら二人で歩き続けた
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