オデッセイ

さあ、旅を続けよう
時計屋のおじさんが
「お待たせ」と笑って
そっと螺子を巻くみたいに

さあ、旅を続けよう
翅を穿つデブリに
継ぎ接ぎ塗炭の板が
錆び付いても

砂垢溜まり、ヘッドライト
そっと拭い取って
泣き腫らしていた
インジケータ夢で濯ぐ

滅多になく
ご機嫌に吠えるエンジン
尻尾を振って
今日は星でも降るのかよ?

きっと想像していた通りの
自分になんてなれやしないこと
許せないままの僕を
赦してやりたいんだ
機体は速度を上げて
もっと遠くまで
レーダーが今映すのは
一つだけ、淡い光。
君は多分揶揄うのだろう?
「遅いよ」なんて拗ねたフリをして。

さあ、旅を続けよう
知らず弛んだボルトが
見たくない見なくちゃいけない
ものを見せるけど

明かりの消えた街を
彷徨ってみたって
きっと憐みのカンテラは
過去を照らすだけ

あられもなく
咳き込み出すエンジン
吐く息は白く
今日は星でも降るのかよ。

どうして?
生きてる只それだけで
増えてゆく間違いの足跡
躊躇うなよ、正解は
踏み出すこと
機体は悲鳴を挙げて
だけど、遠くまで。
誰も頼んでなんかいないのに
朝が街を焦がすように
迷いはずっと消えはしないだろう
それも含めて正常なファンクション

ここに居させてと
縋っていた場所はいつも
早く行くんだと
優しく僕を突き放した
僕を試すように時は過ぎて
荒れ狂ってみなよ?
風に変えてやる。
叫べ、叫べ、叫べ、
宜候!!!

いつだって大事なものの数だけ
軋むジャイロに舵はぐらつく
壊れそうになる時も
僕はゆくんだ!
機体よ速度を上げろ!
もっと遠くまで
レーダーに重なったのは
一つだけ、淡い光。
これでも澄っ飛ばしてきたんだよ?
「だけどもっと、星を追い越して。」

僕はずっと此処に居たんだよ、
「遅いよ」なんて拗ねたフリをして。
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