松江の宿

宍道湖を
墨絵ぼかしに ふる雨は
ふたりを泣いて くれるやら
きょうを限りに あきらめますと
すがれば下駄の 緒が切れて
ああ紅がちる 松江の宿よ

出雲路の
空にあなたを ひきとめて
わたしのものに したかった
そえぬ恋なら この人ならば
想いをこめた 移り香を
ああ残したい 松江の宿よ

城下町
水のみやこの 恋かなし
わたしは春の 枯れ柳
帰したくない あなたの背なに
かけよりながら おんな傘
ああ差しかける 松江の宿よ
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