勝利の笑顔

カバンを右手に持ったまま
高いフェンスにしがみついた
半分 バカに するように
僕は 君を 見ていた
日だまりの匂いの制服と
抜けるような 笑顔だったね
話す夢は ズレていても
同じ時間を持っていた

僕は夏を逃げるように
ただ電車を 乗り継いで
君は夏を 追いかけるように
何度も靴を 変えた

でもいつか 笑うのは 僕だと
いつか 勝つのは 僕だと思っていた
青春に舌を出し 道に迷って
しゃがみ込んでしまうことも知らずに……

あれから何年経ったあと
偶然街できみと出会った
途切れていた 連絡は
きっと 僕のせいだった
「何とか楽しくやってるよ」
そう言う君の笑い顔は
あのグラウンドで走り続けた
少年と同じだった

やぶったメモに書いた
連絡先をくれたあと
コートに向かうイレブンのように
人波へ飛び出して行く

見送りながら軽く振る手を
いつかおろして 僕も走ろう
勝利の笑顔は君に輝いたけど
クラクションを笛に変えて
走ろう

勝利の笑顔は君に輝いたけど
クラクションを笛に変えて
走ろう
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