紅花の宿

愛しながらも 別れた人の
想い出捨てる 旅でした
吊(つ)り橋(ばし)渡って 十二(じゅうに)の滝で
みれん流した はずなのに……
なんであなたの 苗字で泊る
酒田みちのく 紅花(べにばな)の宿

格子窓には 鳥海山(ちょうかいさん)の
根雪に淡い 遠灯り
芭蕉(ばしょう)の細道 蛇の目の傘で
肩を抱かれた 倖せが……
酔えば手酌の お酒にゆれて
こころさみだれ 紅花の宿

泣いてあの日に 戻れるならば
なみだで越える 六十里越(ろくじゅうり)
風持ち潮待ち 北前船の
古い港で 明日(あす)を持つ……
女心に 春呼ぶような
霧笛ひと声 紅花の宿
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