晩鐘

風花がひとひらふたひら君の髪に舞い降りて
そして紅い唇沿いに秋の終わりを白く縁取る
別れる約束の次の交差点向けて
まるで流れる水の様に自然な振りして冬支度
僕の指にからんだ 最後のぬくもりを
覚えていたくてつい立ち止まる
君は信号が待ち切れない様に
向こう岸に向かって駆けてゆく
銀杏黄葉の舞い散る交差点で
たった今風が止まった

哀しみがひとひらふたひら僕の掌に残る
時を失くした哀れ蚊の様に散りそびれた木犀みたいに
眩暈の後の虚ろさに似つかわしい幕切れ
まるで長い夢をみてたふとそんな気がしないでもない
心変わり告げる 君が痛々しくて
思わず言葉を さえ切った僕
君は信号が待ち切れなかっただけ
例えば心変わりひとつにしても
一番驚いているのはきっと
君の方だと思う

君は信号が待ち切れなかっただけ
流れに巻かれた浮浪雲桐一葉
銀杏黄葉の舞い散る交差点で
たった今想い出と出会った
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