白い花

寒空の下凍えそうな道を
重い足取りで辿りながらも
君と見付けた花が咲いていて
思わず笑顔がこぼれそうになった
あの懐かしい場所で
冷たい雨の滴がこぼれて
傘を持つ手にも跳ね返るけど
かじかんだ手を温めるものが
僕にはポケットと片方の手しか無いさ

枯れ葉を散らして風が鳴いてる
少しの温もりだけ残して行く
思い出もまた色が落ちては
自然と忘れて行く 時が流れるなら

君が僕の手を握った拍子に
途切れかけていた気持ちの糸が繋がる
温かいその手を握り返せない
僕の前で白い花が揺れていた

涙の跡が凍らないうちに
冷たかった雨は雪にかわっていった
震える僕の肩を叩くように
ゆっくりと優しく舞う白い花びら

もえるように赤く色付く並木に
静かに降りる雪の頼りなさに
細い身体を僕にあずけて
眠った君のことをそっと重ねてみた

この胸の中で君が育てた優しさの花
誰かを想って芽吹いた
乾いた心で枯れないように
僕はいつも優しい誰かを探している

遠過ぎる場所でも僕の眼は
白い花を見落とすことなく摘める
君の手が届く所まで
この風は吹いてくれるだろう
そこで咲く花はきっとあの日僕が摘んだものさ
今は誰かを探して揺れてるはずなのに
あの場所に立ったら本当の気持ちがこぼれる

君が僕の手を握った拍子に
途切れかけていた気持ちの糸が繋がる
僕の手の平を優しく包む
君のその手を握り返せずにうつむいた
一人ぼっちだけど 心の中
君が育てたあの白い花は
枯れないようにずっと優しい誰かを待ってる
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