祭りのあと

祭りのあとの淋しさが
いやでもやってくるのなら
祭りのあとの淋しさは
たとえば女でまぎらわし
もう帰ろう、もう帰ってしまおう
寝静まった街を抜けて

人を怨むも恥しく
人をほめるも恥しく
なんのために憎むのか
なんの怨みで憎むのか
もう眠ろう、もう眠ってしまおう
臥待月の出るまでは

日々を慰安が吹き荒れて
帰ってゆける場所がない
日々を慰安が吹きぬけて
死んでしまうに早すぎる
もう笑おう、もう笑ってしまおう
昨日の夢は冗談だったんだと

祭りのあとの淋しさは
死んだ女にくれてやろ
祭りのあとの淋しさは
死んだ男にくれてやろ
もう怨むまい、もう怨むのはよそう
今宵の酒に酔いしれて

もう怨むまい、もう怨むのはよそう
今宵の酒に酔いしれて


注:三連目“日々を慰安が吹き荒れて”は
吉野弘氏の詩の一行を借りました。
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