ひとり宿

ひと汽車遅れて 行くという
あなたの嘘の 哀しさ憎さ
いいのこのまま 来なくても……
呼べば日暮れる 湯の川に
椿ちるちる ひとり宿

線香花火に 火をつけて
あの日のあなた 偲んでみるの
いいのこのまま 別れても……
ふたつ躰が あったらと
声が聞こえる ひとり宿

手酌のお酒に 酔いながら
しみじみ想う この世のさだめ
いいのこのまま 死んだって……
あなた欲しさに 抱きしめる
枕さみしい ひとり宿
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