浅き夢みし~浄瑠璃「明烏」より

たとえこの身は 淡雪の
露と消ゆるも いとわぬが
添えぬさだめの 吉原で
夢の中だけ 夫婦のふたり
覚めてくやしい 明烏(あけがらす)

惚れた男に この命
投げたつもりの 浦里(うらざと)を
なぜに殺さぬ その心
うれし憎らし 鬼よりこわい
抱いてくりゃんせ 時次郎

(都々逸)
あきらめましたよ どうあきらめた
あきらめきれぬと あきらめた

枕ふたつを そのままに
冥途まで行く 旅支度
月も冴えざえ 大門(おおもん)を
掟破りが ひらりと飛べば
明日は噂の 明烏(あけがらす)
×