ロマンティック伝説

行き交う人の少ないこの街は 夕陽の欠片で夜を告げる
主人からはぐれて彷徨う犬は 自由と不安に遠吠えする
エサを見つけたか走り出し ビルの影に僕を誘うのだ
薄暗いオレンジの灯の下に 金属音は注意を引く
街灯にもたれた一つの影の 視線がうつ向く、心に絡む
絡んだ、それで手繰られるように 彼女のほつれた髪に絡み付く
交わし合った目で返す言葉で 今日は孤独から抜け出せる
時代遅れの指輪をした手で 僕の手をゆっくりと引いていく

長椅子に怠惰な姿勢で座る 彼女の衣装ははだけ、そこから
覗くゆるんだ下腹部が焼きつく 諦めにも似た静かな眼差し
譲れないものを持つ唇 あごを上げたその横顔
うろたえの無いその微笑み 居心地の良い避難場所
全てを脱ぎ捨てる亨楽な場所 そこには何かが宿っている
何であるかは判らないが 価値があるのか判らないが
とても優しく丁寧に 身体と心で応えてくれる
赤く塗られた短い爪の その手でコーヒーを入れてくれる

よじれ絡み付くシーツで首筋に 感じる汗をぬぐい捨てる
目を開けると、光りが飛び込むと 影が浮き立つと香りそびえ立つ
含んだタバコを差しだす君に 午前の光りの熱に苛立ちを
振り返る気力も失くした街で 僕に声をかけてくれたのに
うつ向く顔見て、そおっと動き 薪の無い暖炉の上の
子供の写真を後ろ手で 音を立てずにそっと倒す
交わし合った目で返す言葉で 今日は孤独から抜け出せる
時代遅れの指輪をした手で 僕の手をゆっくりと引いていく

戦場のこの街で唯一 神に放牧する事を許された
最も美しい狼達よ、女達よ どうぞ彼女達に昼の太陽を

行き交う人の少ないこの街は 夕陽の欠片で夜を告げる
主人からはぐれて彷徨う犬は 自由と不安に遠吠えする
エサを見つけたか走り出し ビルの影に僕を誘うのだ
薄暗いオレンジの灯の下に 金属音は注意を引く
街灯にもたれた一つの影の 視線がうつ向く、心に絡む
絡んだ、それで手繰られるように 彼女のほつれた髪に絡む
戦場の街で唯一 神に放牧する事を許された
最も美しい狼達よ、最も美しい女達よ

戦場のこの街で唯一 神に放牧する事を許された
最も美しい狼達よ、女達よ どうぞ彼女達に昼の太陽を
悲しみの後の伝説はいらない ただただ黙って膝を抱える男達に
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